早期警戒衛星のもたらすもの
北朝鮮のミサイル発射時の混乱を理由として、早期警戒衛星の
打ち上げを目論む動きがあるが、どうも大事な視点が欠落している
ように思われる。
早期にロケット、衛星の発射、打ち上げを把握できたとして、それを
どう生かすかの議論が中心であり、憲法上の位置づけが中途半端
なのである。
ロケットだとしてミサイル防衛システムを発動し、迎撃用ミサイルを
いつ発射するのか、あるいはどう避難するのかだけが問題なのでは無い。
ロケットを認識し、低い弾道で迎撃ミサイルを発射した場合、命中すれば
双方のミサイルの破片が地上に落下するであろうが、それは一体どこに
落下するのか。命中しなかった場合、迎撃ミサイルは一体どこに着弾し
破裂するのか。
島国日本において、太平洋側から正体不明のロケット、飛翔体が飛来
するおそれは小さい。
想定されているのは、専ら日本海側、より詳しくいえば北朝鮮からの
ロケットであろう。
だが、海上から迎撃ミサイルを発射すれば、発射する船舶の位置によっては
着弾点は、中国、韓国、ロシアとなるおそれがある、事前の通告をしたと
しても、着弾を甘受する必要があるとはいえないため、日本からの戦闘行為
として、反撃を受けることともなりかねない。
早期に発射の事実を把握しても、避難するための時間的余裕は、アメリカ
からの情報にたよった場合と、どれほどのゆとりが得られるものであろうか。
戦争の放棄を謳った憲法9条の改定なしに、軍事行動を行うことを可能にする、
むしろ積極的に武力を行使することを前提とする早期警戒衛星の打ち上げは
いかなる大義名分をもってしても、許されるものとは思えない。
兵は国の大事、死生の地、存亡の道なり。察せざる可からず。
孫子 始計篇