「殺人事件被害者遺族の会(宙の会)」に異議あり | 橘 白扇 のひとりごと

「殺人事件被害者遺族の会(宙の会)」に異議あり

5月3日宙の会の全国大会が開かれ、


「時効の廃止」


「時効の停止」


「時効が成立した遺族に対する国家賠償責任」


が嘆願書の内容とされ、法務省や各政党に提出されるそうである。




時効制度については以前このブログで何度か取り上げたので、


今回は国家賠償について検討して見る。




すでにわが国には、犯罪被害給付制度が存在する。


これは、生命身体を害する罪に当たる故意による犯罪行為によって


死亡、重傷又は障害が発生した場合に給付金を支給する制度である。


昭和55年5月1日に「犯罪被害者等給付金支給法」として制定され、


平成13年7月1日、平成18年4月1日にそれぞれ改正法が施行されている。


被害者、遺族にとって十分な金額かどうかは別として、法律による給付の


道が既にひかれているのである。


このうえに、時効が成立した遺族に、しかも国家賠償として支給するには


明確な根拠が必要となる。


賠償であるためには、先行する違法行為が存在することが必要である。


国家賠償というからには、国家による違法行為が前提と言わざるを得ない。


警察、検察が必死の捜査体制をひいたにも拘わらず、犯人の検挙が出来


なかったことを、国家の違法行為とするにはいささか無理がある。


時効の廃止、時効の停止の2つの主張と、国家賠償の主張には矛盾が


存在する。時効が廃止されれば、犯人検挙の可能性をいつまでも追い続ける


こととなり、国家賠償請求の機会は、永遠に訪れないこととなる。


国家賠償の機会だけに注目すれば、むしろ時効完成の期間を短縮するほうが


よいという結果になろう。


犯罪被害者給付制度と両方が並立する根拠をどこに求めるのかの説明も


必要になる。




新聞も徒に宙の会の主張のみを掲載し、同情的な解説を書くだけでは、本質


を見誤ることになる。





 一曲に蔽われて、大理に闇し。


                     荀子 解蔽篇