政府紙幣は藩札か太政官札か
景気対策の財源確保のため、日銀券とは別に政府紙幣を発行しようとの
構想が自民党内で浮上しているとのことである。
明治政府が戊辰戦争の戦費と殖産興業のために4,800両の太政官札
を発行した例があるが、その信用は低くほとんど強制的に流通させたことが
歴史に明らかである。
しかし、この太政官札発行当時は中央銀行設立以前の、しかも戦費という
切羽詰まった資金需要のための発行であった。
借金を増やさず財源調達ができるとの目論見のようだが、世界中で日本の
円に対する信用をはなはだしく傷つけることは、何ら考慮されていないとしか
思えない。
いったい日本以外の国でこのような発想をする国が存在するのであろうか。
中央銀行の通貨発行、市場の番人としての役割を放棄すれば、輸出入に
よる資金、海外投資の決済手段としての円は信頼をどう確保するつもりで
あろうか。
現代は太政官札当時とことなり、経済のグローバル化が遥かに進展しており、
政府紙幣は、いわば江戸時代の藩札のごとく、地域通貨の域をでることは
不可能であろう。
それが日本銀行という中央銀行の発行する紙幣の価値にどう影響するか、
いまさら言うまでもあるまい。
金本位制時代の法則として人口に膾炙しているグレシャムの法則は、
信用貨幣時代にも幾分の真実を含んでいよう。
悪貨は良貨を駆逐する。