経済大国との思い込みを捨てよ
麻生総理は施政方針演説で相変わらず、日本を世界第二位の
経済大国と発言しているが、その幻想をそろそろ捨てて現実を
直視する必要がある。
今朝(21年1月30日)の毎日新聞朝刊に、子どもの貧困問題が
1ペーシ゜、2ページ、3ページの3つの記事で取り上げられている。
全ての家庭で毎日新聞が購読されているわけで無く、その他の
新聞で扱われているかどうかも知らないので、少し内容を紹介して見る。
1ページでは東京都板橋区の調査で、中学生の不登校に生活苦
も原因となっていることを記載している。
生活保護を受ける世帯の中学生の不登校発生率が、生活保護や
就学援助を受けない家庭の中学生の4.8倍に上がるとのことである。
板橋区の就学援助受給率は35%、生活保護の保護率は2.47%で
ともに全国平均の倍以上とのことである。
2ページのシリーズ記事「先生 生徒指導は今」では、経済的に苦しい
家庭に学用品や給食費などを支給する就学援助の利用者が07年度
は142万人、受給率は13.7%に達し、98年度の約2倍だとのこと
である。
3ページの連載「ひと」では国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩さん
の岩波新書「子どもの貧困」を紹介している。
「家庭の貧困が学力差を生み、非行にかかわる確率や虐待にも関係
するのは、福祉関係者や研究者の間では自明だった。でも、それを
明らかにするのは差別につながると、学校でも社会でも触れたがらな
かった」
「この1年で、貧困にメディアの関心が向いた。」と書かれている。
実は私が大学院で犯罪学を学んでいた1980年ころ、各地の少年院
を訪問して施設の見学と所長のお話をうかがっていたころ、多くの所長
が、おっしゃった言葉を記憶している。それは簡単に言えばつぎのような
ものである。
「ここにいる少年たちは、貧しいからここにいるのです。同じように非行
を行なっても、家庭が裕福で少年の保護、更正に役立つ環境を準備
できる少年は、少年院送致を免れることが出来ます。家庭が貧困で
両親をはじめ、少年だけに注意している余裕のない家庭の子が入所
して来るのです。」
この現状はおそらく現在に至ってもそのまま続いているのではないか
と思う。当時この事実を声高に叫ぶ事のできなかったことに、忸怩たる
ものがあります。
このような現実を顧慮せずに少子化対策が成り立つのかはなはだ
疑問といわざるを得ません。
まして世界第2位の経済大国との思い込みは噴飯ものでしかない。
願わくは安心して子どもを産み、育て、教育できる社会の見取り図を
早急に準備して欲しいものである。