与党税制改正大綱、とくに土地譲渡益課税について | 橘 白扇 のひとりごと

与党税制改正大綱、とくに土地譲渡益課税について



景気後退局面に備えての減税策の一環として、土地譲渡益の一部

非課税措置の創設を、与党税制改正大綱は決定すると伝えられている。


09-10年に購入した土地は5年超保有後の売却時に譲渡益を最大

1,000万円まで控除するというものの様である。


以前、不動産の長期譲渡について特別控除があったが、それと同様の

手続きによって、譲渡所得を計算することなると思われる。


しかし、この制度が、なぜこの景気後退局面に必要であるのか、

理解出来ない。


5年間に土地が購入時より1,000万円値上がりしなければ、何の効果も

ないことは説明するまでも無い。


現在、大都市圏を除く地域では㎡単位ではなく坪単位での取引が中心

だと考えられる。個人が取引する場合は、せいぜい100坪か200坪が

良いところではないか。

そして、坪単価が10万円を超える土地はそんなに多くないと思われる。


100坪を坪10万円、総額1,000万円で購入し、5年超保有後に、

総額2,000万円プラス仲介料等の費用額で売らない限り、

1,000万円満額の控除は受けられない。

毎年20%以上、土地が値上がりしないといけない計算である。


振り返って現状を見てみれば、これが幻想であることは自明と言わざるを

得ない。

土地バブルの時代はしらず、近年土地はむしろ、値下がり傾向にある。

多少値上がりしても、1年もたてば値下がりに転じているのが実態である。


土地を購入し、建物を建設してそこに住むのであれば、ローン控除を

受ければいいのであり、5年超経過後に売却することを予定して、土地を

購入するには、不安定要素が多すぎて、相当の勇気が必要であろう。


無論、長期的な政策として土地の保有、購入を推進するのであれば、

政策として、一概に否定すべきものとは思わないが、取得を09年、10年

に限定するのであれば、少なくとも個人に対しては有効な政策、減税効果

のある政策とは思えない。


この制度の恩恵を受けるのは、大都市圏の土地に関しての取引、不況に

影響されない階層に属する人々、企業のみであろう。


斯くして格差社会はその差を増幅させる事となるのである。


与党税調に所属する議員諸氏の見識が疑われ、実に嘆かわしい。