私は蛇だ、それも出来の悪い蛇
他の蛇に比べて能力も低いし、つい自分が不利になるような余計なことを言ってしまう
□蛇との接触
やはり20~30歳あたりに接触することが多かった
私のいた世界である程度の人は皆蛇だった
出来の良いのから悪いのまでさまざまな蛇がいた
□別の世界の蛇
それは奇妙な光景だった
キレイな蛇が人間相手に説法をしていた
あるものは蛇に救いを求めた
あるものは蛇に教えを求めた
あるものは蛇に自分が進むべき道を示してもらった
蛇はなんなく人間たちにそれぞれが進むべき道や、豊富な知恵を貸したり時にはその不安となる要素を取り除いてあげた
それはいとも簡単に、まるで魔法でもかけるように・・・
同じ蛇である私は、その「カラクリ」がわかっていた
種明かしをすれば何でもないことだったりする
人間たちは無知で、視野が狭くて
実経験が乏しかった
ただそれだけのことだった
人間が蛇に劣ることを一つだけあげるとすれば、本能的な鋭さのようなものかな
それはたぶん人間であれば蛇にはかなわない
私は蛇にこう問いかけた
私「なぜ人間を騙すのですか?」
キレイな蛇は微動だにせずこう答えた
キレイな蛇「自分の利にならないことでは、騙すということにはならないのですよ」
なるほど・・・
一利あるかもしれない、そもそも人間たちは騙されていることにすら気づいていないだろう
□キレイな蛇の正体は?
私が輩生活晩年の頃に知り合った素敵な人(私が28歳くらいの時)
たまたまどういう風の吹きまわしか、その時期昔の知り合い(中学~フリーター時代)
に街でバッタリということがとても多かった
その前の時期などは、私から連絡をとろうにも連絡がつかなかったり
連絡がとれても、結局疎遠なまま終わることが多かった
この時期はちがって、私から積極的に誘うようなこともあり(さみしかったから)
再び昔の仲間とつるむようになっていた
そんな中、高校の友人H(事実上のリーダー)の紹介みたいな感じで何回か遊んでもらったのがこのキレイな蛇である
□やはり実業家崩れ・・・
キレイな蛇さんは当時30代後半で私たちの10こくらい上だった
よくいる「商売やってた系オヤジ」とちがって、魅力的で色々な知識に長けていた
私の友人達はというと、その仏様のようなキレイな蛇さんに完全に掌握されていた
だが意図は見えない、私の友達連中はお世辞にも優秀とは言えないのだ
はっきり言ってしまうと格下であり取り込む価値すらないだろう
私のレベルなり、その段階ではそもそも格上であるキレイな蛇さんを見透かすことなどできないのだ
変な事を言って、その場の空気を少し悪くしたのも意図的なモノだった
私はキレイな蛇さんのあまりの完成度に屈服するしかなかったのだが
せめて一矢報いたい
あるいは、キレイな蛇さんの弱点なり矛盾を見つけたかったのだろう
同じ蛇として・・・
□整合性
キレイな蛇さんの経歴は完璧なモノだった
在学中は部活動などに打ち込み、就職後機を見て独立
長年の不景気や
不摂生などの影響で病気にもなってしまい廃業
しばらくの潜伏生活を得て、浮上準備中というモノだった
そこに嘘や矛盾は見当たらず、現在の準備中という多少のキナ臭さはあっても
蛇の私から見ても、それは説得力のあるものだった
私の友達は人間であるから、そもそも疑うことを知らない・・・
□仏様
裏の顔(失礼ながら)
の他に、世間様向けの表の顔は仏様と言っても差し支えないほどだった
特に話術に長けていて、時折冗談を交えながら話すそのテクニックなどは時には私を魅了した
危ない、取り込まれそうだ(^^)
でも私の理想像とは少しちがう・・・
□人格者
親孝行。
さらに土日などには地域の子供達に柔道を教えていた
世間体も重視する立派な人格者、打算というかたぶん趣味だと思う
そう「私達」と関わっていたのもたぶん趣味の延長線だろう
□二人きりで
キレイな蛇さんは私によく言った
キレイ蛇「私と盆暗くんはよく似ている」
キレイな蛇「私の若い頃にそっくりだ」
そりゃあ「同種」ですからね・・・
そこには特に打算や駆け引きなどなかったと思う
キレイな蛇さんは、私が抱えているような悩み
苦悩していることを見透かしているようだった
私「察しのとおりです・・・」
キレイな蛇「盆暗くん年のわりには幼いよ!」
キレイな蛇は私に厳しい事を言った
人間達は、どちらかというと私のことを
年のわりにはしっかりしてるとか
現実的だねだとか、色んなこと考えてるんだねーとかほめてくれることが多かったが
キレイな蛇は違った
たぶんキレイな蛇なりの叱咤激励だったのだろう
同種として未完成な私を歯がゆく思ったのか、あるいは期待してくれたのか
疎遠になってしまった今ではわからないが・・・
ごめんなさい、私はあの頃から成長もしてないしヘタしたらそれ以下かもしれませんね
今ではあなた様にあわす顔もないのです、期待に応えられなくて申し訳ありません・・・
□器用な蛇
輩の現場で知り合ったとてもきらきらと輝いている蛇だった
初対面は最悪だ、というよりかは私が一方的に警戒していた
私「ココ俺が使ってるから!」
器用な蛇「失礼しました、不○グループから聞いたのですが」
私「えっ・・・?」
器用な蛇「H13~14年頃に・・・」
まずいな私はその当時駆け出しにもなってない・・・
私が態度を軟化させ、共通の知り合いがいたこともあってその日のうちに意気投合し飲みに行った
キレイな蛇「ここは気にいってるんです」
それは行ったこともないようなお洒落な店だった
私「・・・」
この人は私のカリスマ象に一番近いかもしれない
□能力の高さ
器用な蛇の能力はすさまじかった
自由業、時には会社勤め(主にノウハウなど盗むため)
出店(自営業規模)から企業(会社経営)
人に投資したり(会社やらせたり)
それでいて飲みの場も無難にこなすし、女にも事欠かない
それでいて、その4~5つのことを同時に高いレベルでこなしていく
年はわたしの10こ上くらいだった
いくら私が努力してもかなわない、まだ若かった「全盛の私」がそう思った
私の負けだと・・・
私「どうして、そんなに器用にやれるのです?」
私はいたたまれなくなり、器用な蛇に救いを求めた
器用な蛇「私は三味線を弾くのが上手いのです、ただそれだけなのですよ」
器用な蛇は、私にアドバイスなどをしてくれることはあまりなかった
どちらかというと、その場を楽しみたかったのかもしれない
私「タクシー運転手になることになりました・・・」
器用な蛇「残念です・・・」
私「・・・」
器用な蛇「タクシーは、そこで終わってしまうかも。もったいないですよ」
私「ありがとうございます、腐らずやっていきます・・・」
ごめんなさい、もう楽になりたかったんです
期待に応えられなくて、本当に申し訳ありません・・・
私はまた一つ大切なモノを捨てた
同種の信頼というかけがえのないモノを・・・
□丸くなった蛇
やはり出逢いは現場だった、私の二まわりくらい上の人
私「この変は昔からのアレでよー」
丸くなった蛇「ほう・・・」
その場はそれでおさまった、不自然なほど静かに・・・
別の日、私は少し遠征していた
地元のパトロールも飽きたというのもあるかもしれない
隣り街には「知らない蛇」がたくさんいた
蛇A「大蛇さんも丸くなっちゃって」
蛇B「この前ガキと揉めたらしいな」
蛇C「昔ならさら○て埋めてたのによー」
あきらかに私のことを言ってる
ガラの悪いプロレスラーみたいな連中がだ・・・
私「○○さんでいらっしゃいますか?有名な方みたいですね?」
丸くなった蛇「この辺で私の名前を知らない奴はいないよ、古い人間であればな」
私「それは失礼しました」
この人(正確には蛇だが)
には公私ともにお世話になった、いつも具体的なアドバイスを私にくれた
この人は珍しくその道一筋で、そんなに器用な人ではなかったのかもしれないが
その道では全盛期に10本の指に入ると言われていた人だ
丸くなった蛇「いいかい、盆暗ちゃんはまだ若いそれは無限の可能性があるということだ」
私「はぁ・・・」
丸くなった蛇「何をやるんでもね、つねに先頭集団にいなくちゃならない、わかるな?例え最後尾でもいいから先頭集団にいなくてはダメだ、それだけは忘れるな」
私「はい・・・」
それからしばらくして・・・
私「詰みました」
丸くなった蛇「ありえない、失望した」
私「すいません、がっかりさせてしまって・・・」
丸くなった蛇「この期に及んで、まだそんな事を言ってるのかそれではダメだ」
私「申し訳ありません」
丸くなった蛇「バカだったんだと思いたいが、そうは思えない」
私「はい、おっしゃる通りです」
丸くなった蛇「情けない、しっかりしろよ!」
私「すいません、期待に応えられなくて・・・」
公私ともにお世話になった蛇は私を突き放した
もう連絡をしてくるなともいった
ごめんなさい、期待に応えられなくて
私にとって最後尾であっても、つねに先頭集団にいるということは背伸び以外の何者でもありませんでした
どうか私を許してください・・・
□頭のいい蛇
その人は丸くなった蛇のツテで知り合った素敵な人、私の20上くらい
私は今までの人生経験でこの人より頭のキレる人を見たことはない
この人の前では嘘はつけない、というよりかはそういう概念すらが無意味であるのだ
全て見透かされてしまう
私より出来のいい蛇たちが、あえて接触を避けていたほどだ
頭のいい蛇「ああそう、盆暗ちゃんは昨日のアレで凌げた」
私「!?なぜ知っているのですか?」
おかしいな・・・
絶対情報が漏れるわけない状況だったんだけれど・・・
頭のいい蛇「ふーん、やっぱりねまぁどうでもいいけど」
私「勘弁してくださいよ(。´Д⊂)」
いっそのこと弁護士になればよかったのにと思うほど頭のいい人
女にも事欠かず小刻みに女を変えながら、取り込んで事実上金の世話までさせていた恐るべき人
もてる人はいくつになっても、もてる(^^)
私「タクシー運転手になることにしました」
頭のいい蛇「ふーん、まぁいいんじゃない」
私「・・・」
私は死にたくなった・・・
□最後に
私はタクシー運転手になる時にさまざまなモノを捨てた
金で買えるモノはいいが、そうでないモノもある
現状、勝手なことを言う人も多いが(まだ若いんだからとか)
私の失った信用は図り知れず、都合よく捨てられない過去もある
私が再浮上しようにせよ、今の段階では他のノウハウもなく
副業で片手間で収入アップを狙うにせよ、どちらにせよ「この人達」に一度話を通さねばならない
それがどれだけ困難であるかということは、一度真剣に想像して見て欲しい
一度失った信用はそうそう回復しないのである・・・
これを書いていて涙が滲むのはなぜなのか、あの時ああしておけばよかったとか
今の現状を嘆くとかたぶんそんなことではないだろう
自分の立ち位置をまちがえた、ただそれだけのこと
私は、背伸びをして「素敵な人」に付き合ってもらうなり
先頭集団についていくのが辛かった、それだけで疲弊してしまい限界がきてタクシー運転手にまで堕ちてしまった
ただそれだけのこと、それ以上でもそれ以下でもないのだ
私は疲れたとにかく疲れた
そして、お世話になった皆様
堕ちる前に優しくしてくれた人達には本当に申し訳ないと思っている失望させてしまって・・・
蛇は皆様のまわりにも、ごく普通にいると思う
たぶん20~30人に一人は蛇だ
その中でも私のような「出来の悪い蛇」となると珍しい、たぶん200~300人に一人だろう
私は今だに自分の立ち位置がよくわからない
一番は自分の生活だけれども、出来の悪い蛇として何かやるべきことがある気もするけれど、それがわからないのだボンクラだから
蛇にも色々いて、リーダーを率先してこなすモノからあえて2~3番手につけるモノ
本性を隠し人間のように振る舞ってるモノもいる、様々なのだ
私は蛇とライバル意識しながら切磋琢磨するのも疲れてしまうし、人間とも仲良くなれない
そんな私はこれからどこへ行けばいいのだろう(^^)
そしておこがましいけれど、私ですら付き合う人は選ばせてもらう
私的に魅了のない人とは関わりたくない、それが私の本音・・・