【詩】「ローマの猫」 | 山下晴代の「そして現代思想」

山下晴代の「そして現代思想」

映画、本、世界の話題から、ヤマシタがチョイスして、現代思想的に考えてみます。
そしてときどき、詩を書きます(笑)。

「ローマの猫」

 

ギボンは仲間うちの間で、

とくに目立たない凡庸な人で通っていたと誰か尊敬する評論家が書いていた。彼はカピトリーヌの丘にすわり、日がな一日考えていた。

そして、

ある日突然『ローマ帝国衰亡史』を書き始め、

大量の巻を書き終えた。

そのことに惹かれ、ローマに着いたら、

カピトリーヌの丘に行かねばならないと思っていた。

丘は、腹の部分がえぐれていた。これが丘か。

不思議な形だった。あたりまえだ。

ローマ時代が掘り出されたのだから。

腹の部分は赤土。外側の道路は白く乾いてた。はて、

ギボンがすわっていたあたりはどこだろうな

そう思っていると、道の向こうから

猫がやっていた。不思議な渦巻きの猫で

ローマではそれが普通のようだった。

ローマ時代、パリは、LUTÈCEと呼ばれたんだよ。

猫は通りすがりに言った。