『NHK特ダネ? 昭和天皇「拝謁記」』考
盆休み、実家でふだんは見ないテレビを見ていると、NHK「新資料発見!昭和天皇の秘められた事実!」などと銘打ち、何度も自慢げに「宣伝」している。小分けに放送しているようだが、なんでも初代宮内庁長官、田島道治氏の家族が秘していた記録、田島氏と昭和天皇との「対話」を、田島氏が記録したものが発見され、それは、『宮内庁実録』には記されていないものが九割だという。
その中で、昭和天皇は、太平洋戦争の発端となる、張作霖事件への「反省」、軍部の暴走を止められなかった「反省」、国土と人民の命を縮小してしまったことの「反省」などを述べ、昭和26年の時点で、この「反省」を全国民に伝えたいと思っていたことが明らかになったという。
ここには、軍部が政府を呑んでいく事実(これを「下克上」と表現しているところが、それだけで、昭和天皇の内面もわかろうものだが(笑))が、現実の事実と重なってはいるものの、それほど大騒ぎするものかとも思われる。第一、東京書籍発行の『宮内庁実録』(高橋源一郎は「ヒロヒト」という小説(『新潮』に連載されたが、「その後」、どうなったか、わからない(笑))の資料に使ったものの、Amazonでは全然売れてない(笑))というものは、ものものしい響きながら、公の日録で、昭和天皇の「心」のなかにまでは踏み込んでいない。それに記されていない「事実」が九割として、「後悔」や「反省」を、昭和天皇の「人間像」として持ち出すのもどうであろうか。
また昭和26年に、国民への言葉のなかで、この戦争への「反省」の部分を、当時の首相吉田茂に、「いまさら戦争のことを言ってもしょうがないから、削除した方がいい」と言われて、また、田島氏も削除に賛成したとして、結局削除したとか。この「資料」はこれから学者などによって分析させるのだろうが、そのなかには、『昭和天皇』著者の、吉田裕氏も含まれているのだが。さあ、どうですかね。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/emperor-showa/articles/about-diary-01.html