前回の続き


ポケコちゃんの泥まみれの手と、泥で汚された我が家の車


血の気が引くのと、怒りがに湧き上がるのを同時に感じたのは初めてでした。








目の前のポケコちゃんは、きょとん、というあどけない感じを装って、私を見上げていました。


そのときの表情は、今でも忘れられません。


なんというか…その目は黒い穴……。

私の主観が入り過ぎて形容し難いのですが、ただの黒い丸いモノが、こちらに向けられているだけ。


さらに、車の隣りにある駐輪場。そこに並んでいる、娘のお気に入りの水色の自転車にまで泥が塗られていました。



「…ママ…?」

ただならない雰囲気を察して、娘が近寄ってきます。

その手をすぐに確認しますが、全く汚れていません。

後をついてきたMちゃんの手も綺麗です。


「……ねえ、これ、もしかしてポケコちゃんがやったの?」


こんなに証拠があるのになんの証拠もない、そんな状態で私はポケコちゃんの顔を真っ直ぐ見つめて訊きました。


ポケコ  「ううん、知らないよ」


黒い穴は全く怯むことなくこちらに向けられています。

言い方が悪いのですが、「大したタマだな」と思わずにはいられませんでした。






その後、仕事から帰ってきた夫に事の顛末を話すと、やはり夫も私と同じ気持ちになったようでした。


夫婦でこの後どうするか話し合いました。


ポケコ母に話すか、警察に相談するか、学校に相談するか……


幸か不幸か、この車は1ヶ月後には廃車予定でした。

新しい車を迎える事になっていました。



話し合いの結果、この事件は我々家族だけの腹に収める…ということになりました。



決定的な証拠がなかったからです。



もしかしたら、娘かもしれないし、一緒にあそんでいたMちゃんかもしれない。



また、内容が結構センシティブなので、娘の通う学校外の友人や親族にしか相談できず…

本当は、ポケコちゃんを知るママさん達に話をできたらどんなに楽か…と考えた時期もありました。


     下矢印

             例えばこの人たちのことです 



ただ、今となってはそれで良かったのだと思えるようになりました。

  


そして、今改めて思うこと。

あの頃は、ポケコちゃんと娘がよく遊ぶ仲だったので、娘からお友達を奪ってしまうような気がして強く出るのをためらっていました。


しかし、やはり、ポケコちゃんは娘にとって良いお友達ではありませんでした。


このとき、ポケコ母にハッキリ伝えて関係が悪化したとしても、このあと結局同じようなことになってしまったので、早いか遅いかの問題。

後悔先に立たず。


この言葉が身に沁みた出来事でした。