東京で開催されれば必ず足を運ぶ展覧会というのがいくつかあるのだけれど、私にとってミュシャはそんなアーティストの1人。

何度見ても美しく愛しい。
その色合いも表情も、描かれる女性は私の理想そのもの、憧れそのものと言って過言でないほど。

そんな私のミュシャ認識に一石を投じる展覧会となったのが、今回六本木で開催されている、

ミュシャ展 パリの夢 モラヴィアの祈り
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奇しくも謳い文句は
「あなたが知らない本当のミュシャ」


冒頭述べたように、私のミュシャのイメージは女性画であり、
つまりはパリの洗練された舞台ポスターや花と女性の美の饗宴であったわけで、
そのようなイメージを強力に狙った展覧会がほとんどであったのだけれど。

この展覧会は今までとは一線を画すテーマを持っていた。

ミュシャがチェコ出身である、というのは知識として持ってはいたのだけれど、ここではその思想や民族性が大きくクローズアップされているのだ。

もちろん、ミュシャ王道のポスターや花の連作も展示されているし、それは間違いなく美しいのだ。
が、その妖精のように只管美しい女性画と並んだヤロスラヴァの、なんと力強いこと。
その肉はずしりと生の重さをまとい、
その視線はまっすぐに見る者に向う。
今までのミュシャの認識にない、リアリティがそこにある。

ミュシャの時代に東欧で民族・故国を語る時、辛い歴史を避けては通れない。その時代を憂い、あるいは鼓舞するような、パリ時代とはまた趣の異なる作品が並ぶ。

5月19日まで。
ミュシャ好きはぜひ。