東京は雪で、朝から風景は白く煙り、
低い位置まで張り詰めた雲がひどい閉塞感を醸し出していた。


ひた、と。


たまたま、吉野弘の「雪の日に」など思い出してしまったから、堪らない。

雪はひたひたと。


初めてこの詩を読んだのはまだ少女と呼ばれるに相応しい頃。
不機嫌さを両手いっぱいに抱えて周りに不信感を撒き散らしていた、
ある意味実に子供らしくひねくれていた時期だから、
この痛々しいまでに誠実に葛藤する詩は、頭を全力で殴られたように衝撃的だったのを覚えている。

ひたひたと。

大人になった今でもなお、
雪が降るとこの詩とともにその頃の不機嫌な視線を思い出すことがある。
悲しみが積もって止まないと思っていた、
自意識の強すぎる子供がゆらりと頭を持ち上げる。

寒い、寒い、雪の日に。

そんなに冷え切っているなら、
その手で私を凍死させてみ。
今なら濁など、なんてことはない。