父や母のことを思い出すのは、彼らが実家で元気溌剌として生きていた時のことで、私の恨みつらみの感情のことではない。何だかんだ言っても結局、私は両親のことが好きであったのだと思わざるを得ない。不思議と介護状態であった頃のイメージはなく、私に悪態をついた時でもなく、元気溌剌としている。あの家で暮らしていた頃のことを憎々しく思い出すが、彼らのイメージは元気溌剌だ。苦労して生活してきて、新天地でやっと掴んだ幸せの住処ということであろうか。北側玄関の日当たりのそれほど良くないその家の中で、私は育ったが、あまりいいイメージはない。いつも透明な壁の中で過ごしていた気がする。そんな壁は多分自分で作り上げていたのだろうが、気づいたら建っていて、あまり外の人とは話が出来ないようになっていた。いつも壁の中で体育座りしているイメージ。

家で起きた嫌だったことばかり思い出す。私にとっては苦痛の連続だった。唯一いいイメージがあるとすれば、ギターをかき鳴らしたことか。音楽を聴いて浸っていた事か。あまりいいイメージはない。誰も帰って来る予定がないのに、ひっそりと待ち受けている。