記念すべき還暦の日を家族(息子と娘)とともにロンドンで迎える。
そして、そのままイタリアに渡り、各地を車で巡る。

これだけを決めた私はすぐに手配を始めた。
旅行の手配はすべて自分でやるのが私流。
航空券もホテルもお芝居もコンサートもすべて自分で手配。
好きなのだなあ、そういうのが。
ただ、面倒になると息子がかり出され、私の指示のもと、手足となって働く。
哀れや、息子。25歳。

そして、まずは航空券の手配。
と、ここで息子からストップがかかる。
「チケットが高いよっ!」

皆さんご存じだろうか?
今回のように、行きはロンドン、帰りはイタリアから、という、つまり、往復ではなく、出国と帰国が違う国に行こうと思ったら、チケットがべらぼうに高いのだ!

それがどうした、と言いたいのだが、今回は息子がチケット代など自腹を切るので、そんなものは払えない! とのたまう。
そこで息子の出した案は、中東の国を経由するというもの。

つまり、成田を出て、ドバイを経由し、ロンドンに入り、そこから国際線でミラノに入る。
そして、その後は、ミラノから車でイタリア国内を巡り、帰りはローマから羽田に戻る、という。

「しかもひとり12万だよ! 往復でだよっ!」
と大イバリで鼻を広げる息子。

12万円!? それはすごい……。
しかし、聞くだけで気が遠くなった。

夜の10時過ぎに成田を出て飛行機に乗ること11時間で明け方ドバイ着。
そこで4時間過ごし(4時間ですよっ!)、そこからロンドンに向かい8時間。
そして、同じ日の昼12時頃にロンドン着。
クラクラする。
想像しただけでめまいを起こす。
トシを考えてほしい。
私は還暦、60歳!

しかし仕方がない。
こうなったら、と私は奥の手を使う。
そう。
マイレージで、すべての飛行機をビジネスクラス以上にアップグレード!
旅行好きな私は、普段の買い物の支払いをすべてアメックスのカード一枚に絞り、それをすべてマイレージのポイントに変えているのだ。

しかし、ここでつまづく。
成田からドバイまでは取れたのだが、その後のドバイからロンドンまでと、帰りのすべての行程でビジネスクラスは取れず、エコノミーになるという。

エコノミーで行かんかい!
とお思いかもしれないが、子どもたちはそうだが、私は日本を発つときからが旅行と決めているので、どうしてもビジネス以上に乗りたい!
しかも今回は還暦旅行よ、還暦!(しつこいだろ)

しかしまあ、切り替えの早い私は、エコノミーもまたよしと覚悟し、あとは、旅行を意義あるものとすべく、イタリアの勉強を始めようとしたその時、今度は21歳の娘からストップがかかる。
「その旅行、ちと待たんかい!」と。





つづく


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NHK文化センター青山教室