昨日の続きを書くつもりが今日になってしまいました。
ごめんなさい!

整形外科の先生の前で、左腕の痛みにうなっている私からでした。
レントゲンの結果、腕の骨に異常はないと言う医師。
「じゃ、この痛みはなんなんでしょうか?」
とすがる私。
「ひとつだけ、病名に心当たりがあります」
と重々しく先生。
「おお! なんですか!?」
すると、続いて、先生、
「忘れたんだよね……」
「はあ!?」
皆さん、こんな医者っています?

その後、その医者は、なにかごそごそしています。
いつまでたってもこちらを振り返らない先生の手元を見ると、
そこにはスマホ!
それで病名を調べていたのです。
ついに、切れた私、
「帰ります!」
「は?」
「薬、薬だけ出してください。効くやつを!」
それだけ言うと、私は診察室から転がり出て、待合室へ。
「大丈夫!?」と娘。
大丈夫じゃないっ!

娘が診察代を払い(本当は払いたくないよ!)、処方箋をもらうなり、隣の薬局にダッシュ!
薬を手に入れ、その場で飲もうとすると、
「強い薬ですから、なにか食べてからにしてください」
えええええええ!

私たちは、向かいにあったスーパーに駆け込み、
パンのようなものを買い、
店を出るなり、立ったままガツガツ食べ、
薬を飲んで、タクシーを拾い、家まで帰る。

しかし、その間も痛みは続きます。
薬はいつ効くのだっ!

うんうん唸っているうちに、いやーな予感がしてきます。
なぜ、こんなに胸が苦しいの?
もしかして、これは、腕の痛みではなく、心臓から来ているの?
それとも、脳?
要するに、これって、血管が詰まっているというやつじゃないの?

さらに心臓バクバク、痛みはピーク。
やばい!
絶対におかしい!

家につくなり、娘をひとにらみ。
付き合いの長い娘は、ひと言、
「救急車だね」

私はスマホを出すや、「119」を押す。
娘に頼めばいいものを、私はどんな時でも自分でやってしまいます。
「はい、火事ですか? 救急ですか?」
「き、救急です」
声が震えるのは、痛みと心臓ばくばくでおかしくなっているためです。
「どうしましたか?」

ひととおり説明すると、「すぐに行きますからね。安静にしてお待ちください」
男性の優しい声に、もう……惚れてしまいそう。
一方で、私の中に葛藤が。
手の痛みごときで呼んでもいいものだろうか、救急車。
もっと重篤な患者さんがいるかもしれないのに……!
しかし、血管だったらどうする、田渕!
しかも、この痛み、尋常じゃないぞ、ほんと、陣痛並み。

とにかく、やがて救急車が到着し、私は、担架に乗せられる。
ああ、なんという安心感。
腕は痛いが、間違いなく病院へ行ける!
マンションのガードマンさんに見送られながら、救急車は出発。
一路病院へ。

ピーポーピーポーと鳴り始めると、それまで心配そうにしていた娘が、
「おお」と嬉しそうな顔になる。
思わず、私も、「外見てみなさい、外」
「おお、車がよけていく」
感動する私と娘。
でも、腕は痛いのですよ、尋常じゃなく。
でも、好奇心が抑えられない体質なのです、私は。

病院に着くなり、お医者様からあれこれ聞かれ、すぐに点滴が始まる。
「安定剤が入っていますから、少し落ち着きましょうね」
いや、痛いんです、ものすごーく!
しかし、痛みは変わらないものの、なんだか、ふんわりしてきて、「もうどうでもいいや!」という投げやりな気持ちになってきます。
「もう死んでもいいや。心残りは子供たちのことだけど、仕事ももうどうでもいい……」
そのあたりで、息子も駆けつけてきてくれましたが、
「おお、息子よ……」
と言うのが精いっぱい。

そして、痛みとぼんやりで、ほとんどなんだかわからないまま運ばれ、
レントゲンを撮られ、
CTを撮られ、
ベッドに戻って、「す、すみません、痛み止めをください……」
という言葉もとぎれとぎれになった頃、
「原因がわかりましたよ!」と先生。
「な、なんですか!?」

お恥ずかしい。
頸椎の異常。つまり、首の骨がおかしなことになっていて、それが神経に触り、猛烈な痛みとなっていたということでした。
恥ずかしくはないけれど、心臓だの、脳だのと大騒ぎをした私は誰?

痛み止めのほかに、神経痛の薬をいただき、それを飲んでしばらくたったら、痛みは徐々に治まってきました。
薬はすごいものですね……。
怖くもありますね。

病名は「頸椎ヘルニア」とか。
治療としては、マッサージと、痛み止めのみ、とのこと。
要するに、私の場合、職業病ですね。
座って原稿を書く日々が33年。
とほほです。

しかし、「頸椎」はともかく、「ヘルニア」ってちょっとねえ、おしゃれじゃないというか、なんと言うか……。

こんなことで救急車まで呼んで、本当にすみません、とお医者様に詫びたところ、
「頸椎」は神経が集まるところ。
本当に痛いものですよ、と励ましてくださいました。
それにしても、最初に行った整形外科病院の、スマホ医者との違いの大きさよ。

と、そんなこんなで、家に帰りついたのが、夜中の1時。
へとへとでしたが、それでも書きましたよ、原稿の続きを。
息子に、椅子の高さや、パソコンのモニターの位置なんかも変えてもらって、
初めて、「書く姿勢」というものを意識しました。

実は今日も病院に行き、別の検査を受けました。
そして、いただいた薬が私には弱すぎて効かないため、もっと強い薬をもらってきました。
それでも、いつかこの病気を克服するぞ!
という意気込みだけはあり、
首の体操などを始めています。

しかし、人間とは弱いものですね。
私は日ごろから、「自分自身」を主人にして生きているつもりだったのですが、
今回は、完全に「痛み」の奴隷でした。

でも、皆さんも気を付けてくださいね。
現代人はスマホを見続けているため、首が前に出て、私のようなことにならないとも限らないのだそうです。
ほんっとに痛いですから。
陣痛並みですから。
皆様、気をつけてくださいね。

ということで、私の救急車騒ぎでした。
お付き合いくださり、ありがとうございました。

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NHK文化センター青山教室