大坂なおみさん、やりましたね!
勝負はすべて厳しいものだけれど、大勢の観客に囲まれ、あの狭いコートの中、ひとりで闘う孤独を思うと、本当に胸が痛みます。
それだけに嬉しかった!
ワインを開けて乾杯しました。

と、それに続いて、こんな話題はどうかと思いますが、
先日亡くなった市原悦子さんのことを時々思い出します。

私は、もう随分前に、「花嫁介添人が行く」というドラマでご一緒しました。
結婚式場で、お節介焼きの花嫁の介添え役として、毎回トラブルを起こす役を市原悦子さん、その娘が宮沢りえちゃんという、よくわからない配役ながら、人気シリーズとして時々放送されていました。
その中の何本かを書かせていただいたのです。

あるとき、撮影所で楽屋を訪ねたところ、市原さんが、私を見るや、「あなたがお書きになったの!?」とびっくり仰天されました。
というのも、私はまだ若く、ミニスカートなんてはいて行ったのですね。
私の書くドラマと、姿のギャップが大きすぎると大笑いされ、さらに、「台本を読んで、50代くらいの方が書いたと思ったわ」とあのお声でおっしゃいました。
まあ、お褒めいただいたのですね。
「若い割には、なかなか深い話を書いたじゃないか、あんた」、というところでしょうか?

他の俳優さんにも、「ねえ、この台本、この方が書いたのよ。こーんなに若いのよ! びっくりでしょ!」と、またもあのお声でご紹介くださったり、お菓子とお茶を出してくださって、しばらくおしゃべりをさせていただきました。

話の内容は、もっぱら、「どうしてその年で、年を重ねた人のセリフが書けるの? そのコツはなあに?」というような、それまでどなたにも聞かれたことのないような突っ込んだことばかりで、とても感激したのをおぼえています。

私はその日のことが忘れられず、いつかまたこの方とご一緒させていただける日があるだろうか……、そんな日が来たら、「あの時の、ミニスカ女です」と自己紹介したいものだなあ、と思っていたのですが、ついにかなわず……。

残念で残念でたまりません!

脚本家は、ドラマというツールを通じて、たくさんの方と会わせていただけるありがたい仕事ですが、何度かご一緒できる方もいれば、一度きりという方も、いえ、その方がずっと多いものです。
一期一会を胸に、心して仕事をさせていただこう、と改めて思った私です。

尊敬に値する素晴らしい女優、市原悦子さんに、合掌……。



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NHK文化センター青山教室