中年を過ぎた人間が、一念発起して夢をつかむ物語に弱い。
さらに、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲に乗せて
激動のドラマなんかが映し出されたりしたら…。
今はボリショイ劇場の清掃員として働くロシアの元名指揮者が、
同じようにオーケストラを解雇されたかつての仲間と
偽のボリショイ管弦楽団としてパリに乗り込む。
直面する問題をあっという間に解決し、
とんとん拍子に実現するロシアン・ドリームと軽妙なタッチの笑い。
一方で、ブレジネフ時代の圧政や時代の波に乗れない老共産党員の物悲しい滑稽さも描かれる。
エピソードのすべてが調和し、ロシア人という私にとってあまり身近ではない人々の物語にどんどん引き込まれていく。
クライマックスの演奏シーンはもう禁じ手としかいえない。
なぜ主人公のアンドレイは若手ヴァイオリニスト、アンヌ・マリーを共演者に指名したのか、なぜオーケストラの団員たちは解雇されたのか。
協奏曲とともにあふれ出てくる真実に、込み上げるものを抑えきれないから。
エンドクレジットが終わるまで席を立たないのは暗黙の了解だけど、
感動で赤くなった眼を元に戻すにはちょうどいい時間かも。
2009年フランス
監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
出演:
アレクセイ:グシュコブ
メラニー・ロラン