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あまりにも心が痛い。


答えが出るはずもないことに、いろいろな考えを巡らせながら、試写室を出た。
でも、目の前に広がる夜の渋谷の街はいつもと変わらない。


自分だけが、この映画を見る2時間前とは違う世界にいるようだった。


忌まわしい過去と決別するために、別人として新しい人生のスタートを切った青年。
あまりにも従順で、素直でシャイな彼。なぜそんな状況にいるのだろう。


やがて気の合う仲間ができ、愛する人ができる。
愛する人には、今の自分とは切り離せない自分の過去をわかってもらおうとするのは当然の感情。


謎が次第に解明される過程はミステリー映画のようで、片時も目が離せない。


人生をやり直すことは無理なのか。
多かれ少なかれ生きるということは他人と関わりあっていくこと。
過去の痕跡を残さないことは、普通なら不可能に近い。


人は第三者の立場にいるとき、物事の片側しか見ない傾向がある。
それは仕方のないことなのだろうか。


『BOY A』が抱えるテーマは、いくら考えても誰と話しても、答えが出るようなことではない。
けれども、この作品を見たことで、少なくともそのテーマについて意識するようになるだろう。


もう1つの主役はこの「イギリス」という国だと思う。
太陽が出ていても、空が低い。
寂しさやわびしさ。労働者階級の暮らし。
世界中のどの国でもあり得るテーマにもかかわらず、
銃社会のアメリカとは違う「イギリス」独特の空気が、この作品にぴったり合っている。


奇妙なことだが、切なくやりきれない印象とともに、なぜか純粋である種さわやかな余韻が残った。
本当は「なぜか」ではなくて、もう私の中では答えが出ているのだけれど。
それが知りたい人、そして矛盾ともいえるこの不思議な感情を体験したい人は、この映画をぜひ見てほしい。きっとこんな気持ちを抱くのは私だけではないと思う。


ぶどうぶどうぶどうぶどうぶどうぶどうぶどうぶどうぶどうぶどうぶどう


主役のアンドリュー・ガーフィールドは繊細な美青年。笑うと口がアンソニー・パーキンスになります。

印象的なのはフィリップ役の子かな。


監督:ジョン・クローリー

出演:アンドリュー・ガーフィールド、ピーター・ミュラン

2007年イギリス


11月、渋谷シネ・アミューズほか全国順次ロードショー


◆公式サイト
http://www.boy-a.jp/


シネトレ試写会 (シネカノン試写室)