はっきり言って、こんなもの本当に苦しんでる氷河期世代の人のための試験ではありませんよ。

 

私は過去2回この試験受けて、2回とも筆記試験は突破しましたが面接で落とされました。その際、人事院に限らず様々な省庁の採用担当と話をしましたが、そもそも彼等の採用方針に大きな矛盾というか誤解があることにやっと気づきました。

 

以下「就職氷河期世代の国家公務員中途採用の方針」より抜粋

 就職氷河期世代試験の実施に当たっては、就職氷河期世代の方々の活躍の場を広げることが本旨であることを踏まえ、取り組むことが必要である。また、この世代は、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代であり、希望する就職ができず、現在も、不本意ながら不安定な仕事に就いている、無業の状態にあるなど、様々な課題に直面している方がいることも踏まえ、試験の際には、職歴がない、あるいは少ないといった外形上の要件のみにとらわれることなく、各府省における面接を通じて、例えば以下に掲げる人材など、各応募者個人の適性や能力等を可能な限り細かに見た上で、判断することとする。
(1) 自身の経験や苦労を踏まえ、公務に対する強い関心と全体の奉仕者として働く熱意を有する者
(2) 採用後の研修又は職務経験を通じてその知識及び能力の向上が見込まれる資質を有する者
(3) 行政課題に取り組むに当たり重要となる論理的な思考力、判断力、表現力などについて基礎的な能力を有する者
また、単に受験者が高齢であることをもって採用を忌避するといったことがないように留意する。
そのためには、職歴以外の学校などでの経験や苦労を踏まえて、受験者がどのように公務について取り組みたいと考えているかといったことをよく確認することが重要であり、面接においては、就職氷河期世代としての経験を詳細に聞いた上で、公務への適性等を見極めつつ、選考を行うこととする。

 

 太字で強調した箇所をご覧いただきたいんですが、まず”不本意ながら不安定な仕事に就いている、(あるいは)無業の状態にある”、氷河期世代の人達がこの試験の対象であることがわかります。当然ですね。それはいいんですが、それを踏まえたうえで、次の各省庁がどのような人材を求めているか?の条件(1)を見てみると、”自身の経験や苦労を踏まえ、公務に対する強い関心と全体の奉仕者として働く熱意を有する者”となっています。

 問題は、”不本意ながら不安定な仕事に就いている人”で、なおかつ”公務に対する強い関心を持っている人”がどれだけいるか?ということです。前者は非正規と言い替えますが、非正規の人が求めているのは正規の仕事であって、本当に困窮している人であれば、正規であれば民間だろうが公務だろうがどちらでもいいはずです。ただ公務員であればクビになることもないし、定年まで安定した収入が約束されますから、不安定な非正規を何年、あるいは何十年と続けてきた氷河期世代の人々にしてみれば、どちらか選べるなら公務員の方が良いに決まっているわけで、毎年せいぜい百数十人程度の採用枠に対して何千、あるいは何万という人が大挙して応募することになるわけです。1次試験を突破した大半の人が言うことは大体同じで、

「実は昔からずっと公務員になりたかったんです」とか、

「民間よりスケールの大きな仕事ができる公務は大変やりがいがあります」

なんていう適当な言い訳を言うわけですが、面接官からしてみればそんなとってつけたような志望動機は即門前払いです。なぜなら受験生の絶対数が多すぎるから。もうおわかりでしょうか。合格になるのはほんの一部の、”過去に公務員になるチャンスがあったけれど民間を選んだ人で、正規雇用としてバリバリ働いていたけれど、何らかの理由で直近の数年だけ非正規で働いていた人”です。つまり、氷河期世代だけど別に困ってないし、民間でも普通に稼くことができるけどやっぱり公務員が安定してて良いよなーって思い始めてる人です。それくらい水準を上げなければ、何百倍もの倍率で合格者を絞り込むことはできません。

 だからどの面接官も必ず「なぜ国家公務員になりたいの?」と聞くのです。それは「民間でも十分やっていけてるのに、なぜ国家公務員になりたいの?」と聞かれているのと同じで、それに答えられない大多数の(本来この施策によって救うべき)氷河期世代の人達は合格にはならないのです。