平野啓一郎「富士山」
平野啓一郎さんの短編集です。5つの短編が収めれれています。内容的には分かり易くなるほどと思ってしまいました。
「富士山」物語の最後で主人公の女性が「ふと、富士山の正面といのは、どの方向から見た姿なのだろうかと考えた」と思います。これは人というものも、どの面がその人の正しい姿なのだろうかということなのでしょう。正解はどこから見ても富士山ですしその人もその人なのでしょう。これは平野さんが言うところの「分人」なのだと思います。
「息吹」この世がメタバースだと考えてしまう「息吹」しかしそれは他人の存在を無視しているとも言えるのではないだろうか。これは西洋哲学の中で目に見えるものは信じることができないというもの。暗に西洋哲学への批判なのでしょうか。。。
「鏡と自画像」死刑になりたく殺人を考える主人公。そんな彼が殺人をやめた理由は。。。平野さんは死刑反対の人です。冒頭に、罪を犯した人の話を聞くより罪を犯すことを押しとどめた理由を知らしめる方が良いのではないかといいうことが紹介されてます
「手先が器用」嘘でも褒められることは良い。この前の「鏡と自画像」の後に読むとよけいに響きました。そして褒めることは繋がっていく。この後の「ストレス・リレー」でストレスが繋がっていく話との対比が良いですね
「ストレス・リレー」は、ストレスが人から人へと移り行く。それを止めた人は素晴らしい人。それがルーシーだったというお話