テア・オブレヒト「タイガーズ・ワイフ」
本屋大賞の第2回翻訳小説部門は2013年のこの作品です。
著者のテア・オブレヒトは旧ユーゴスラビアのベオグラード出身。内戦のため国外に逃れ最終的にはアメリカ合衆国に住む。
この物語は、明確にどこだとは書かれてませんが、あきらかに紛争時の旧ユーゴスラビア。主人公は若い女性。彼女は祖父と同じ医師の仕事についています。物語はその祖父が亡くなったことに始まり、彼女が生きているリアルタイムの紛争時の様子と、祖父が語った2つの不思議な話が交錯して進んでいきます。背景となる紛争や国の様子が僕には詳細に分からないため、正直読み取りにくかったです。
2つの不思議な物語は、祖父が幼い頃に近所にいた「トラの嫁」と呼ばれた少女の話と祖父が医師として出会った死神のような仕事をしている決して死ぬができない「不死身な男」の話です。このあたりはマジックリアリズム的で、「百年の孤独」のような雰囲気を醸し出しています。解説によると著者のテア・オブレヒトはガルシア=マルケスに影響を受けているようです。戦乱の中で土着の人々の風習の中では、不可思議なことが起きても不思議ではないのです。

