ミシェル・ウエルベック「わが人生の数か月」
訳者の木内さんによるとこの本は、ウエルベックが2023年5月下旬に急遽刊行した告白形式のエッセイということです。この時期、ウエルベックは、イスラムをめぐる発言と性的内容の映画への出演という2つのスキャンダルに見舞われ、これらのことについての自己弁護のが書かれています。
読んでいると、ウエルベックが描く作品の主人公によく似てます。訳者の方も、「ウエルベックが抱えた二つの災難は、言ってしまえば、身から出た錆で、あまり同情する気にもなれないが、それをひとつの物語に仕立て上げる作家の筆力はさすがとしか言いようがない。(略)ウエルベックの愚かな振る舞いにはあきれるほかないが、人間のどうしようもない愚かさに触れることができる、類いまれな一冊である」と書かれてます。ただ、こうしたウエルベックの行為の原因の一つとして、訳者の方は、2022年のノーベル文学賞をウエルベックが有力視されてた中で同じフランスのアニー・エルノーが受賞したことで
で、彼を自暴自棄に追いやったのではないかとも書かれてます。また、エルノーは、ウエルベックのことを反動主義者でアンチ・フェミニストだから自分が受賞したことよし、彼が受賞しなかったことを喜んでいたようでもあったと書かれてます。