上橋菜穂子「香君 西から来た少女 上」
上橋さんならではのよく考えられた物語。たまに児童文学に分類する方もいますが、その内容は一般書です。
今回はウマール帝国が治める世界の物語。この帝国はオアレ稲を使って属国の支配を確立しているのです。しこのオアレ稲はどんな環境にも適応するのですが、種籾ができないため、ウマール帝国が種籾を属国に配って支配しているのです。そして、それで支配できる理由のもう一つは、このオアレ稲は他の植物を枯らしてしまうので、オアレ稲がなくなると食べるものがなくなってしまうということです。
このオアレ稲をもたらしたのが香りですべてのことが分かるという香君でした。この初代香君が亡くなった後の時代が舞台です。
発展を続けてきたウマール帝国でしたが、オアレ稲の害虫が発生し始めたのです。物語は香君と同じ能力を持つ一人の少女アイシャが登場することから始まります。
このオアレ稲が持つ他の植物を枯らす能力を持つ植物は実際に存在します。ブタクサなどがそうです。アレロパシーと呼ばれるものです。種についてもF1種の場合は同じものができない場合が多いということです。こうした植物の特性を上橋さんはうまく使われているなと思いました