泉鏡花「婦系図 下」
菫が咲いて蝶の舞ふ、人の世の春のかかる折から、こんな所には、何時でもこの一條が落ちて居る、名づけて縁(えにし)の糸と云ふ。禁断の知恵の果実(このみ)と等しく、今も神の試みで、棄てて手に取らぬ者は神の子となるし、取って繋ぐものは悪魔の眷属となり、畜生の浅ましさとなる。是を夢みれば蝶となり、慕えば花となり、解けば美しき霞と成り、結べば恐ろしき蛇と成る。
鏡花の文調がいいですね。
物語はクライマックスで、早瀬主税の生い立ちなども分かり、何故に彼がこんな行動をしたのかがはっきりしてきます。このクライマックスは皆既日食の中で早瀬と河野家主人との対決です。この二人の運命は。。。