泉鏡花「婦系図 前篇」
鏡花の長編の「婦系図」の前編です。読み方は「おんなけいず」なのですね。
鏡花の文章は美しいですが、文語に近いものがあるので分かりにくいところがあります。嬉しいことに角川ソフィア文庫にビギナーズ・クラシック・シリーズの解説本を読んでます。おおまかな流れが分かり、意味がとりやすいです。
さて、この物語の主人公は早瀬主税。彼は芸者のお蔦を身請けして一緒に暮らしています。しかし、彼が書生として住み込みをしていたドイツ文学者の酒井俊蔵の娘の妙子も好きなのです。その妙子に友人でもあった前の軍医監の息子の河野栄吉が嫁にとろうとします。
有名な台詞「切れるの別れるのツて、そんな事は、芸者の時に云うものよ。・・・・私に死ねと云って下さい。蔦に枯れろ、とおっしゃいましな」というのは、この本にはありません。明治座公演に向け鏡花が戯曲「婦系図」に書き加えたのだそうです