森博嗣「ナ・バ・テア」
スカイ・クロラ・シリーズの第二作です。読み始めは、主人公の「僕」という言い方で前作の続きかと思ってましたが、読み進むにつれ、主人公はどうも女性のようではないですか?あれ、第一作目は気づかなかったぞ、と思い、調べていくと、この第二作は過去に戻ってるのですね。この第二作目の主人公は草薙水素で第一作目では上官だった女性。この第二作は草薙が戦闘機乗りだった頃の出来事が書かれてるのですね。少しずつ、いろいろなことが明らかにもなっていきます。
それにしても、空での戦闘シーンの描写は森博嗣さんが素晴らしく描いています。S&Mシリーズとは違った魅力になっています。そして、ところどころ、人生を達観したような描写が良いです

僕は煙草に火をつける。煙を吹き出すとき、空を見上げた。煙を空へ帰してやろうと思ったのかもしれない。星空が冷たそうだった。

理由がなければ、なにも正しくないし、なにも間違っていない。

試験でがんばって、クラスで一番の成績を上げたら、代わりに落ちていく奴がいるわけで、そいつの気持ちを考えなければならない。そいつに対する優しさを持たなければならない。ということだろうか?僕は、もし自分が落ちていく立場になったら、そんな同情は絶対に受けたくないな。まっぴらだ。

隣の比嘉澤が、僕が部屋を出る音を聞くだろう。こういうのが、つまり不自由ってやつだ。優しさが不自由を作っているのだといえる。