ジョージ・エリオット「ミドルマーチ2」
このミドルマーチは大作でありながら冗長と思えることもなく割りとすらすらと読めます。その理由の一つは著者であるジョージ・エリオットが登場人物を割と客観的に描いていることにあるのではないでしょうか。著者と話者が同一ではないということは巻末の解説で訳者の廣野由美子さんも書かれていることですが、エリオットが描き出す話者の立ち位置が面白いです。この物語の話者がフィールディングのことを例えで持ち出したりしますが、「トム・ジョウンズ」での各章の冒頭の話者の語りはそれだけでかなりの量なのです。
さて、物語はフェザストーンの遺産の行方が家政婦のメアリの行動によって思わぬ方向にいってしまいます。そしてドロシアとカソーボンの夫婦関係は破綻への道を駆け上がります。ここでもカソーボンの遺産が問題になってきます。
このようにミドルマーチの町を舞台に似たような人間模様をそれぞれの状況によって描き分けていかれます。悲喜こもごもの人間模様が面白いです。エリオットは読書が登場人物に極端な感情移入ができないような人物描写をして、人物模様を楽しませてくれています。