太宰治「きりぎりす」
太宰治の中期の短編集。先日読んだ「パンドラの匣」はモデルのいた物語だったけど、これはいつもの太宰治でした。いつもの太宰治とは、彼自身が身にまとっていた生活破綻というか常に精神的に追い詰められているというか、そういった人物の叫びというものが感じられる作品と僕は考えてます。
この中のいくつかは角川文庫の「女生徒」の本と同じ作品が収録されてました。
さて、本の題名にもなっている「きりぎりす」。どうしてもイソップ寓話の「ありときりぎりす」のきりぎりすが頭に浮かんできます。貧しい画家に嫁いだ女性の視点で描かれた作品です。清貧な画家と思っていたのが、絵が売れるにつれ俗物となっていく夫に愛想が尽きてしまったという話です。その夫の画家が後先考えないイソップのきりぎりすに僕には思えてきてしまうのでした