夏目漱石「私の個人主義」
夏目漱石の講演集です。講演だから結構分かり易いかなと思いましたが、なかなか微妙なところに気付き、そこから明治以降の近代日本の文明批評となっていいます。さすが漱石というところです。

個人の自由は先刻お話しした個性の発展上極めて必要なものであって、その個性の発展がまた貴方がたの幸福に非常な関係を及ぼすのだから、どうしても他に影響のない限り、僕は左を向く、君は右を向いても差支ないくらいの自由は、自分でも把持し、他人にも附与しなくてはなるまいかと考えられます。それが取も直さず私のいう個人主義なのです。