永井荷風「あめりか物語」
殆ど読んだことのない永井荷風。彼を有名にした作品がこの「あめりか物語」です。僕はてっきり紀行文だと思ってたのですが、解説に小説とありました。
永井荷風がアメリカ、フランスと渡った経験をもとにして書かれた小説なのですね。現地で見たこと聞いたことが元になっているのでしょうが、小説ということで荷風の思ったことがストレートに出てるのではないでしょうか。
あめりか物語と言っても、その多くは日本人のアメリカ移住者の生活とか、紐育(ニュウーヨーク)などの都会の下町の苦しい生活などが描かれています。それは決して憧れのようなものではありません。

乞食老婆(ばばあ)は気味悪く「ヒヒヒヒ」と笑ってよろしくと女の室(へや)から廊下に出て来たので、戸口の内から様子を覗いていた私も、急に物恐ろしくなって、慌忙(あわ)ててその場を逃げ去った事がある。

この場面では芥川龍之介の「羅生門」が浮かんできました。
そんなこんなでアメリカ賛美の紀行文ではなく結構面白く読めせてもらいました。そのうち続きの「ふらんす物語」も読みたいと思ってます