ロジェ・マルタン・デュ・ガール「チボー家の人々7 父の死」
重篤な状態のオスカール・チボー。著者のデュ・ガールの記述は読み手に対しても死の恐怖を植え付けるかのようにオスカールの末期の様子を生生しく記述します。アントワーヌとジャックはその父の様子に耐えきれず、とうとう兄のアントワーヌはモルヒネを注射するのです。
父の葬儀の終わり帰る途中で無神論者とも言えるアントワーヌと神父が信仰について討論します。アントワーヌはこう神父に言います。
「希望のない終焉は、モルヒネのない臨終同様、おそろしいものと思っています...」
解説では、著者であえるデュ・ガールについて、無神論者というより、反聖職主義者と呼ばれるのが、いちばん正しいのである、と言ってます。そして「神は存在しない。しかし宗教は、かよわき人間にとって絶対に必要なものである」と言っていたと紹介してます。