伊原弘/梅村担「世界の歴史7 宋と中央ユーラシア」
中央公論社版の世界の歴史シリーズ。新しい方ですね。この巻はわりと分かり易かったけど、やっぱり昔の中央公論社の世界の歴史シリーズの方が読み物としては面白いですね。
中国の歴史としては、この宋がある意味、漢民族が作ってきた歴史の最後のような気がします。宋は北宋の後は南宋、その後はモンゴル帝国の元となるわけです。それ故、この巻では中央ユーラシアについても多くを述べています。
この本の中で中国史の大家であった宮崎市定の中国のエリートであった科挙に合格した知識人についての記述が紹介してあって、こういう見方もあるのかと思いました。

だが、かれらを知識人といいうるのか。かれらの学ぶ本は限られている。科挙出題の儒学のバイブルだ。宋代には仏教が流行したが、これらは出題科目に入っていない。かれらの学ぶテキストの総字数を計算した宮崎市定は、それらの総字数は約35万字ほどと計算する。驚くではないか。現在の本だとおおむね1ページに約1000字入るとされる。とすれば、350ページほどの本にすぎない。たったこれだけ字数の本が中国人の心を支配し、思想を律し続けてきたのだ。(略)だが、この暗記大事では、羽ばたく思考は生まれない。また、生みだしたものを伸ばすこともできない。