C.ディケンズ「オリヴァー・トゥイスト 下」
この「オリヴァー・トゥイスト」も「デイヴィッド・コパフィールド」も主人公の少年の名前で、恵まれない環境から脱出する物語ですが、その作品の趣は全く違います。「デイヴィッド・コパフィールド」は、著者のディケンズをモデルとしたもので、デイヴィッド・コパフィールドが主人公として描かれています。この「オリヴァー・トゥイスト」は上の巻でこそ、彼の行動がメインに描かれてますが、下巻になると、彼を取り巻く人々が中心に描かれています。それも当時のイギリスの劣悪な社会環境の中で生きる人々たちです。当時の社会は救貧院こそあるものの、そこは形ばかりのものでいじめの世界とも言えました。そこから生きていくためには悪に走らざるを得ないものでした。そういう意味では、巻末の解説にはピカレスク小説だともありました