大江健三郎「大江健三郎 作家自身を語る」
聞き手は尾崎真理子さん。大江さんの小説を年代ごとにまとめ、尾崎さんが大江さんに語ってもらうもの。
大江さんは物語だけでなく、その思想も優れた視点を教えてくれます。僕は若い頃によく読み、いろいろと学ぶことができました。
僕は学生時代によく読んでいたので、大江さんの作品の前半だったんだなと分かりました。当時は、興味が持てなかった「万延元年のフットボール」からの作品は、今になって読むと面白く読めます。僕も年齢を重ねたんだなと思いました。

日本には私小説という、もっぱら私の小説を書くジャンルがあります。私はそれとすっかり違ったものを作り出して、世界文学に日本人が参加できる仕事としたいーそれは外国文学を勉強している学生ならだれでも持っていそうな野心ですが、私もそういう気持ちを最初から持っていました。

小説をうまく書ける人は、小説を読み取るのがうまい人でもあるんです、たいてい。いい小説家はいい読み手。

本当に思想的な言葉は、その言葉が発せられると第三者の手にとられてすぐ役立つというようなものじゃない。