三島由紀夫「宴のあと」
「三島由紀夫論」の後に、三島の作品を読むと、作家三島のスタンスというものが見えたような気がしますね。特に政治というものの捉えかたをイデオロギーだけではなく、情念というもので捉えているかのようでもあります。
この本は裁判にもなったもので、プライバシーの侵害という言葉は、この裁判を契機によく言われるようになったそうです。
かづは人から色事の相談をもちかけられると、てきぱきと巧い指示を与えた。人間心理は数十の抽斗にきちんと分類され、どんな難問にもいくつかの情念の組み合わせだけで答が出た。
自分ではそれと知らずに、かづはこのとき政治の本質にはじめて近づいた。すなわち、裏切りに。
なぜ野口がかづを妻にしたか?野口が原理を信奉することが深ければ深いほど、野口が暗々裡にこの女に求めていやのは、原理の汚辱ではなかったろうか?