八木荘司「ロシアよ、我が名を記憶せよ」
「広瀬中佐」という戦前の歌があります。僕は軍歌(戦時歌謡)と思ってましたが、今回調べたら文部省唱歌だったのですね。
日露戦争の折、旅順港外で閉塞作戦の時に、部下の杉野上等兵を探して命を落とし、軍神と謳われた人物です。この本を読むまで僕は広瀬中佐は忠臣報国の軍人さんかと思っていたのです。
ところが、広瀬中佐はロシアに駐在していた時にロシア軍中佐の令嬢アリアヅナと熱烈な恋に落ち、戦争後に結婚まで考えていたのです
ところが、日露戦争が始まると志願する形で旅順港封鎖作戦の中で命を落としてしまいます。そして軍神として祭り上げられていきます。
日露戦争というと司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」が有名です。その本で扱われた秋山参謀などはこの旅順閉塞作戦にはあまり積極的ではなかったと、この本には書かれてます。また、司馬さんの本では当時の日本はまだ理性的に行動していたと書かれてます。しかし、そうした真実を隠し広瀬中佐を軍神に祀りあげるなど、後の情報の統制や国民の意識高揚は、この頃から始まっていたように思えました。
題名のもとは、広瀬中佐が福井丸で突入するときに、ロシア語で「親愛なるロシアの水兵たちよ、私の名を記憶せよ」と船に書いたのだそうです。
これは、広瀬中佐からアリアヅナへの伝言なのでしょうか。。。