ゾラ「ナナ」
「居酒屋」がパリの庶民の生活を描いたもの。その主人公夫婦の娘がナナ。
彼女は自分の体を元手に男たちを手玉にとってのし上がっていく。そのことをゾラはこう書き記す。

彼女の絶え間ない欲望は焔と炎えさかり、黄金は彼女の唇のかすかな息吹きに合うとたちまち細かい灰に変わって、時々刻々風に吹き散らされるのであった。

場末の溝泥(どぶどろ)から飛び立った蠅は、社会を腐敗させる黴菌を運び、ただ男たちの肩に止まるだけで彼らを毒したのである。それは良いことであった。正しいことであった。彼女は自分が属する階級、赤貧洗うごとき人々や、社会から見棄てられた人々のために復讐したのだ。


この本で描かれるパリの社交界は、プルーストの描くものとは異質なもの。その矛盾を描きだすこの作品は、自然主義文学作家ゾラの最大傑作と言われてます