サン=テグジュペリ「人間の大地」
ご存じ「星の王子さま」の著者であるサン=テグジュペリの実体験に基づく著作。飛行士であったサン=テグジュペリは、危険と隣り合わせでありながらも、飛ぶことの素晴らしさを知る。この本はエッセイでありながら、その構成や表現の素晴らしさからも小説にも分類されることがあるのだそうです。
物質的な富を蓄えることだけに働けば、自分で自分の牢獄を築くことになる。生甲斐を何も与えてくれない灰のような金を抱えて、孤独の中に閉じこもることになる。
たしかに言葉は以前と同じでも、内実はもう同じではない。つまり、僕らは世界を把握するのに、一昔前の世界を把握するための言葉を用いてるわけだ。
リンゴの木の下に広げたシーツには、リンゴの実しか落ちてこない。それと同じで、星空の下に広げたシーツには、星のかけらしか落ちてこないはずだ。
言ってみれば、自分の体の重みのおかげで、懐かしいさまざまなものの方へ連れていかれる感じだ。
論理的でないって?論理などというものには、僕らの人生を適当に解説させておけばいい。
だが、知ってのとおり、真実というものは世界をシンプルにするもので、事態を紛糾させるものではない。
どんなにささやかな役割であってもかまわない。僕らは自分の役割を自覚して初めて幸せになれる。そのとき初めて、心穏やかに生き、心穏やかに死ぬことができる。人生に意味を与えるものは、死に意味を与えるものだから。