大江健三郎「燃えあがる緑の木 第一部「救い主」が殴られるまで」
この「燃えあがる緑の木」は三部作ですが、それ以前のものと繋がりがあるようです。
僕のざっくりした解釈ですが、大江さんの前期作品は政治的な要素の強いもので、世界にダイレクトにアプローチしていたと思います。大江さんのお子様が障害児として生まれてきてから以降の後期は作品の方向性が変わってきます。以前は、この後期作品群は僕は読めませんでした。しかし、今、この本を読み始めて、すこし前に再読した「万延元年のフットボール」同様、読めるようになりました。
この本の舞台は、大江さんの故郷である四国愛媛県の山地。「万延元年のフットボール」もそうです。大江さんはこの地の村との関りの中で起こる事件に、世界の構造と繋がるものを見出しているように思います。作品の中にも出てきますが、メタファーとしての四国の山中での事件。大江さんの原体験とも言えるかもしれません。