遠藤周作「イエスの生涯」
カトリック教徒である周作さんのイエスの生涯について述べたもの。これは小説ではなく、小説家として聖書などからイエスの真の姿に迫ろうとした作品。
イエスが起こした奇跡の是非は述べてません。救世主(メシア)としてではなく、愛を説くイエスの生涯です。題名もキリストの生涯ではないのです。
イエスの復活もなんらかのメタファーであると書かれていますが、それはイエスの価値を貶めそうとして書かれてるわけではなく、周作さん自身がイエスの説く愛に深く帰依してるが故、人間イエスとして述べようとしてると思います。イエスの所作については尊敬語で書かれています。
愛は現実世界では効果と直接には関係のない行為なのだ。そこにイエスの苦しみが生まれた。「汝等は徴(しるし)と奇蹟を見ざれば信ぜず」と彼は哀しげにその時呟かれたのである(ヨハネ、四ノ四十八)
永遠に人間の同伴者となるために、愛の存在証明をするためにイエスはもっとも惨めな形で死なねばならなかった。人間の味わうすべての悲しみと苦しみを味わわねばならなかった。