題名は彼岸過迄でですが、漱石は序に「元日から始めて、彼岸過迄書く予定だから単にそう名づけたまでに過ぎない」と書いているので、ある意味正月に読み始めるにはよい本なのです。
漱石の後期三部作は「彼岸過迄」「行人」「こころ」です。僕は「こころ」は読んでます。どういう繋がりがあるのか楽しみでした。
さて、読み始めて、主人公の敬太郎の日々の記録のようなもの。どこかにも書いてありましたが「吾輩は猫である」ような感じ。どう「こころ」に繋がるのかと不安でした。
ところが、後半に入り、敬太郎の親友の須永と須永の従妹の千代子との結婚問題。ここで須永が敬太郎に語る二人の今に至る物語は、なるほど「こころ」に繋がるものがあるなと思いました。
須永の千代子に対する思いは、ストレートなものではなく、非常に屈折しているのですが、非常によく分かる心境です。裏表紙にこう書いてあります。
「嫉妬するなんて貴方は卑怯です」
これは千代子の須永に対する言葉です。この言葉に須永の本質が現れいると思います。
今度「行人」を読んで、何が書かれているのか読んでみたいと思いました。