今まで、本を読んでいて、何回かこの本が取り上げられていて、やっと読むことができました。
この本は「デカダンスの聖書」と言われてます。題名の「さかしま」の通り、世の中の常識の反対の世界に生きる主人公のデ・ゼッサント。彼はパリの市街地から人目につきにくい近郊に家を買い、自分の思うがままの世界の家を作ります。
そして、彼はこの家の中で妄想の世界を楽しむのです。やがて精神に変調をきたし、気晴らしにロンドンへ出かけようとしますが、列車に乗るためにパリの町に出るのですが、飲み屋でロンドンを妄想し、その方が望むがままだということに気付き、家に戻ってきてしまいます。
このように、主人公はほとんど動かず文学や芸術の妄想の世界で過ごすわけです。その記述は衒学的でもあり、読んでいて、プルーストの「失われた世界」を彷彿させてくれました。「失われた世界」が光の面だとすると、この「さかしま」は暗黒面です。陥りやすい世界だとも言えます。