今年のノーベル文学賞を受賞した作家の作品です。現在、一番手に入りやすい本です。
ものを書く行為は、まさにこれ、性行為のシーンから受けるこの感じ、この不安とこの驚愕、つまり、道徳的判断が一時的に宙吊りになるようなひとつの状態に向かうべきなのだろう。
この言葉の通り、この物語に記述されてるのは、著者自身と言える主人公の女性の男を求める情熱のみです。この物語にストーリーを求めてはいけません。
ひたするシンプルな情熱のみです。原題はpassion simple。パッションとはもともと、外部から被害を受けたときに生じる「苦しみ」「苦痛」「苦悩」を意味する語なのだそうです。
読んでいるとその通りです。主人公はひたすら男の来るのを待つのみ。すべてがそこへ繋がっていく。美しい恋などではありません。パッション苦痛でしかありません。
それにしても、本の3分の1は解説です。この本を読むとアニー・エルノーについて知ることができます。