モーパッサンが文壇に認められた作品です。
普仏戦争の中、プロシア軍に占領されたフランスのルアン。そこから違う町に逃れるため1台の乗合馬車が出発します。
その乗客の中に、ブール・ド・シュイフ(「脂肪のかたまり」の意)というあだ名を頂戴した娼婦がいました。
そして、途中の宿に泊まった翌日、プロシア軍の将校によって出発を禁じられてしまいます。その理由は、彼女にありました。
彼女を巡って、早急に出発したい他の乗客のとった行動は・・・
モーパッサンは、この出来事を通して見事に人間のエゴを描いています。
あらためて文学というのは、人間の性を描くものだなと思いました。悲劇でもハッピーエンドでもなく、その結末はそれぞれの立場によって変わるものなのですね。
彼女は脂肪のかたまりなのかもしれませんが、人間は欲望のかたまりなのですね。

挿絵が秀逸です