東京に隣接する千葉県の漁師町の浦粕。この浦粕という町はディズニーランドがある浦安のことです。浦安の旧地名が浦粕ということではなく周五郎が変えた地名です。この浦安に周五郎は売れる前に住んでいたのです。この物語はそこに住んでいた時のことを基に描いたフィクションです。
この作品は周五郎の代表作の一つです。エッセイなどで浦安に住んでいたことを読んでいたので迂闊にも読んだものと思い込んでいました。
この浦粕に住み人々は生きるためには何でもするというような人々。周五郎が愛着をもっていたのかというと、粕という文字をあてたことから、読んでいてそんなふうにも思えません。次第に彼らと馴染んでいくことから、周五郎は同化していくことを恐れていたのではないのかなと思います。こんな言葉とともに周五郎は浦粕から突然逃げ出します。

「巡礼だ、巡礼だ」暗い土堤を家のほうへ歩きながら、私は昂奮をしずめるために、声にだして呟いた、「苦しみつつはたらけ」それはそのころ私の絶望や失意を救ってくれた唯一の本、ストリンドベリイの「青巻」に書かれている章句の一であった、「苦しみつつ、なおはたらけ、安住を求めるな、この世は巡礼である」

最後に題名にもなっている青べかとは、周五郎が買わされた青色に塗られたべか船という小舟のことです。