この本は片岡義男さんの角川文庫における第1冊です。amazonで中古本1000円オーバーで買いました。定価は260円です。発行は昭和49年です。西暦だと1964年です。
読み手のことを考えずに好きなことを書いているのは、いつもの片岡義男さんです。しかし、内容はいつもの片岡義男ではありません。
アメリカの音楽のことを書きながら、その背景にあるアメリカというものを政治を含めてがんがんに書いてます。あとがきで参考資料の量ははんぱではありません。書ききれないので途中だということわりもいれてます。

・・・・ロックンロールという名前が、1950年代はじめに、つくられた。ビル・ヘイリーの1952年のレコード『ロッカビーティンブギー』には、「ロック、ロック、エヴリヴァディ。ロール、ロール、ロール、エヴリバディ」という詞があるのだ。

聞く人が、詞のなかのどこかに、自分と同化できる部分をみつけだすことができれば、その歌は「真実」をうたったことになる。

彼(エディ・コクラン)や、映画のジェームズ・ディーンは、死ぬことによって中断されたのではなく、完璧にしあがったのだ。

アメリカをコンサート旅行したとき、収益の一部をヴェトナム反戦運動にまわさないか、とたのまれたミック・ジャガーは、
「ヴェトナムはあなたがたアメリカの問題だ。私は知らない」
と、こたえた。
音楽はようするに音楽で、ローリング・ストーンズはローリング・ストーンズなのだ。ロックは革命ではなく、ローリング・ストーンズもまた革命ではない。

・・・生の音がぶつけられる野外のコンサートでは、この個人の問題は埋没し、祭典とか儀式のような意味の方が強くなるのではないか。・・・・音でなにかを伝える力は、コンサートよりレコードのほうが強いのだ。

私たちの音楽は銀行員のための音楽ではない。聞いた心を持つ人たちのものだ。聞く人が、自分が持っているすべてのもので音楽に反応してほしい。バックグランド・ミュージックではなくて。バックグランド音楽など、過去のものだ。(エリック・クラプトン)


プレスリーについては、最初と最後にだけ登場してきます。しめくくりに、ティーンエイジャーが大統領を選ぶとしたらということで、こんなことが書かれてます。

もっとも可能性のある人間として、フィル・オックスはプレスリーをあげていた。そして当のエルヴィス・プレスリーは、グレースランドの大邸宅にあるプールのまわりを、ひとりモーターサイクルで、あきずになんども走りまわってヒマな時間をつぶしている。彼にはなん重にも巨額の保証がかけてあるため、道と名のつくところでモーターサイクルに乗ることはできない契約になっているからだ。この契約に違反すれば、エルヴィス・プレスリーは保険会社から訴えられる。