カポーティの「遠い声 遠い部屋」に続く自伝的物語。
カポーティの分身も登場しますが、孤児となった彼が預けられ愛した従姉がモデルとなっています。
読んでいて、従姉がモデルとなっているドリーが切ないです。そして、そんな彼女を慕うカポーティの分身の16歳の少年コリンのことを思うと更に切なくなってきました。
ドリーのことをこう譬えます。
じゃ少なくとも妖精です。目で見ただけでは測ることのできない人だ。妖精というのは、人生の引き受け手で、人それぞれに異なる人生をあるがままに引き受け手くれる。当然、いつでもトラブルに巻き込まれます。
そして、ドリーはこう語ります。
でもね、愛は見せない方がいいの。負担を感じさせたり、何故かわからないけどー人を不幸にさせたりするんですもの。
一つのものを愛することができれば・・・・次のものを愛せるようになるの。愛は自分自身で持つべきものであり、共に生きてゆくものなのよ。それがあれば、何でも赦すことができるわ。さあ。
カポーティであるコリンは、過去と未来が一つの螺旋形であることに対し、自分の人生は違うと考えています。
だが、僕の人生は、むしろ閉じた円。・・・・一つの環から次の環へ移行するには・・・・跳躍を試みる他ない。・・・・僕の気をくじくのは、環と環の間に来る無風状態だった。つまりどこに跳んだらよいのかわかるまでの間、その間のことである。ドリーが逝ってからというもの、僕は長いこと無為の日を過ごしていた。