表題を含んだ10篇の短編集。
「荒法師」という短編の舞台は,和田竜さんお「のぼうの城」と同じ舞台の忍城です。
荒法師と呼ばれる俊恵という僧は,死ぬことの苦しみから脱することは可笑しいと考え,仏陀を拝むことも拒否し,真如を求める。しかし,その真如は見つからない。忍城の落ち武者の壮絶な死を目の当たりにして生死超脱の境地を開くのです。
生きることが目的ではない,死ぬことが終わりではない,生死を超えて生きとおす信念,なにものが亡ぶるとも信念の亡ぶることはないのだ,
「羅刹」という面打ち師の物語では,羅刹の相貌を求めるのですが,なかななか見つかりません。そして,とうとう見つけたのは信長の無礼打ちにする恐ろしい形相でした。信長に会おうとして京へ上るのですが,光秀による本能寺の変が起こってしまいます。信長に会うために本能寺に紛れ込み,死にゆく信長を見て,とうとう羅刹の面を完成させるのですが・・・・
二つだけ紹介しましたが,他にも優れたストーリー展開の物語が多くあります。