ロベスピエールの恐怖政治に対して,徐々に反発が生まれてきます。公安委員会と保安委員会の対立。ロベスピエールはリシュルを失った故が表舞台から身を隠します。サン・ジュストはこのままでは自分たちがやられると思い,とりあえず妥協を見出そうとします。しかし,理想に燃えるロベスピエールは悩みます。
そして国民公会でサン・ジュストの演説の中,乱入してきたのは愛人が処刑されてしまうのを妨げようとしたタリアンでした。彼の乱入により,ロべスピエールらは逮捕されてしまいます。
その後,いったんは逃れますが,武力による反抗をロベスピエールが嫌ったため,再び逮捕され,処刑台へと送られます。
ロベスピエールは処刑場への途中のパリ市民の自分への恨みの声の多さに驚きます。これに対し,著者の佐藤賢一さんは彼の信念を書いています。しかし,それはロベスピエールの擁護とは感じられません。どう考えるかは,読者次第だという印象を受けました。
佐藤賢一さんはロベスピエールにこう語らせます。

愛国者でなければ,反革命とみなした。それは善でなければ,直ちに悪という論法だ。が,人間という生き物は,全き善でも,全く悪でもなく,両者の狭間にいる,あるいは両者を渾然一体として併せ持つ存在であったのだ。

ロベスピエールが人間の性というものを理解したかのようです。しかし,すぐにこう語らせます。

いや,それにしても醜すぎる。

革命そのものであったロベスピエールの死によって,革命の理念が失われてしまい,終焉を迎えるのです。そして,その後のナポレオンの登場を待つことになりますが,この巻ではまったく触れられていません。
全18巻という長い物語でした。読む以前は,フランス革命の推進力は何だったか僕自身は不明でした。佐藤賢一さんは,ロベスピエール,ミラボー,ダントン,デムーラン,サン・ジュストといった人物の焦点をあてることで,革命の実体というものを分かりやすく浮かび上がらせてくれました。