漱石さんの前期三部作の代一作です。
熊本から東京に上った23歳の三四郎の恋物語。彼の恋した美彌子さんは,彼女の兄の友人と結婚してしまいます。
ただ,この「三四郎」という物語は,恋愛について終始してるものではありません。一つは,漱石さんの明治という時代に対する批評というものがあちらこちらにちりばめられています。
また,三四郎の美彌子に対する恋心はとてもうぶで,美彌子の心情をしっかり読み取れていないところが面白いです。また,美彌子の思いは,筆者の視点からは書かれておらず,三四郎の視点のみで読者である僕らは読み取るわけですが,こういった書き方がいいですねぇ。。。

馬券で中(あて)るのは,人のここを中るよりむずかしいじゃありませんか。あなたは索引の附いている人の心さえ中てて見ようとなさらない呑気な方なのに。

こんなことを三四郎は美彌子に言われてしまいます。

美彌子の肖像を原口という画家が描く場面では,こんなことが書かれてます。

にも拘わらず,第二の美彌子は,この静けさのうちに,次第と第一に近づいて来る。・・・・もう少しで双方がぴたりと出合って一つに収まると云うところで,時の流れが急に向きを変えて永久に中に注いでしまう。原口さんの画筆はそれより先には進めない。

・・・芸術の影響に全然無頓着な人間でないと自ら証拠立てるだけでも三四郎は風流人である。   

 

なんか今になって漱石さんを見直しました。