とうとうルイ16世が処刑されます。
ルイ16世は機械いじりが好きで錠なども作ってました。そのルイ16世の元に1792年3月に二人の人物が訪れます。
パリ大学医学部教授ジョゼフ・イニャス・ギヨタンと学士院会員の外科医アントワーヌ・ルイです。彼らは新しい処刑機械を開発中でルイ16世に意見をききにきたのです。この処刑こそギロチンです。ギロチンという言葉は,このギヨタンの名前にちなんでの英語読みです。フランス語ではギヨテイーヌ。
ルイ16世は,落とされる刃の形が三日月のようなくぼんだ形だったのを機会工学からの常識ということで人間の太い首を落としやすいように斜めの形にさせたのです。そのギロチンに自らが処刑されるのです。
著者の佐藤賢一さんは,処刑台に運ばれるルイ16世にこんなことを思い出させます。
そして,死刑執行人は「ムッシュー・ドゥ・パリ」で通じるシャルル・アンリ・サンソンです。
佐藤賢一さんは,処刑寸前のルイ16世にこう諭させます。

ああ,つまりは愛することだ。マリー・アントワネットという女を愛したのと同じように,フランスという国に暮らす人々のことも,とことん愛することができたなら,その自由を認められたに違いない。
裏を返せば,そんな簡単なことができなかった。何百年とフランスに君臨してきていながら,この私にいたるまでフランスの王という王は,最後まで誰ひとりとして・・・・
ーだから,わたしは死のう。

「ああ,よいぞ,サンソン」
返事はなかった。ただ者が走る気配はあった。
確かに一瞬ひやっとするだけだった。ルイの景色は,ゆっくりと斜めになった。籠の編み目が大きくなったと思うや,あとが黒一色だった。